このレッスンの目的
様々なコブの滑り方がある中で、基本となる足場作りを行います。
「足場がある」とはどういう状態か?というと、「足場ができている」=「やりたい動作ができる」=「動ける」状態と定義しています。
固定したポジションや姿勢姿勢作りだけではなく、動けるかどうかを基準とします。
スキーの基本である「まっすぐ滑る、曲がる(方向転換)、止まる」の全ての状況での足場(=動ける状態)を確認していくことで、まっすぐ滑りながらすぐ動き出せる、ターンしながら動ける、止まってもすぐ再始動できるという「状況変化に強い」状態を作ります。
コブはスタートからゴールまで状況変化の激しい斜面です。 整地には無い、状況への対応力が求められます。
このレッスンを通じて、コブの上達に直結することはもちろん、スキーそのものを上手くする。 状況変化に強くする。 それが足場作りレッスンです。
また、スキーの性能に頼らない能動的な動作レッスンとも言えるし、時には、コブという外力を受け止める受動的な面もある点が複雑です。
よくあるシーズンインの基本固め、足慣らし的なものではなく、Directlineの上達フローチャートの最も重要な部分になります。
対象とレベル
このレッスンは全てのクラスに共通するメソッドの土台(基本)になります。どんなレベルの方に参加して頂いてもお客様に必ずプラスになると考えている部分です。また、様々なテーマのレッスンを行う中で、この「足場作り」の内容を組み合わせることで、各テーマに厚みをもたせることもにも役立ちます。
初級1 初級2 中級1 中級2
滑走スピードから見た滑りの方向性
Safty 低速
基本練習、土台作りが主眼ですので、ゆっくりとしたトレーニングがメインになります。上手な方が参加しても滑走スピードはゆっくりを貫いてください。(滑走スピードがゆっくりでも、動作が早いことはある。)運動量はそれなりにある。
進め方
1)導入 自己紹介 テーマの解説と達成目標 基本動作の確認 アイスブレーキング
1)-1基本姿勢・直滑降姿勢の確認
■まずは楽な姿勢で立ちます。
そのままの状態でスキーを前に送り出してみます。胸が空を向いて身体が遅れていくことを実感します。

■遅れた状態。おヘソが前に抜けていく様な感覚。踵やブーツの後ろに寄りかかってしまう状態です。
スキーに置き去りされない様に、自分から先に行くぞ!位置につてよーい!自分の頭の中に合図を鳴らしましょう。

滑り出そうするスキーに置き去りにされない様に、「さぁいくぞ」「よーい」などの気持ち込めてから、背中を傾けるようにしましょう。この気持ちが無くただ背中を傾けると、その前傾はすぐにほどけてしまいます。前傾をするだけが目的では無いからです。進もう、落ちよう、などなど、今から何でも動けるよ!という今から何かをしようとして結果的に出来るのが姿勢ですので、姿勢作りを最終目標しないことも大切になります。
背中を傾けるだけでなく、お尻の位置を引いていく、股関節を引いていく、ヘソを雪面に向けていく、お尻の穴を空に向ける様な感じなどもあります。
■基本姿勢が出来たら、お尻まわりを中心に上下運動や、お尻でジャンプをして姿勢が崩れないかを確認します。

背筋が丸まらない状態で、胸を雪面に向けて背中が傾いています。股関節、足首が適度に曲がり、スネの前傾が入った姿勢です。
ブーツのタングに寄りかかってもOKです。コブ滑走は必ず遅れる事を想定すれば、いつもより前より、かなり前でも良いと思います。
基本姿勢が取れたらお尻の上下運動をします。膝を曲げて上下動では無く、ブーツの上から後ろにお尻が外れないように上下運動をしましょう。上下運動の動きは、下げて→上げる。下げて→上げる。反射的なリズムで必ず行って下さい。
上下運動が出来れば、お尻ジャンプをして基本姿勢が崩れない事を確認して下さい。
この時の足裏の荷重の感覚は、爪先より(前より)です。ベタ足にならないこと、踵で雪にトントンと叩ける。飛び上がる事もできる。足首が使える状態が必要で、すぐに動き出せる足場になっていることがポイントです。
1)-2 テーマの説明
今日のテーマはピボット操作!わからいな方おられますか?
幅広い意味で言うと方向転換ですね。コブの中での方向転換は2、3メートル以内てターン終了しなくてはいけない場合もありますので、狭い範囲で方向転換ができる必要があります。それも素早くコンパクトに!
では、ちょっとやって見ますね。~その場所でピボット操作をする~
スキーの性能に頼らない自力での方向転換ですね。
このように、狭い範囲で方向転換ができることと、そして思い通りにスキーの操作が出来れば、コブをより安定して滑る事が出来るようになります。
今日は、ピボットをする為には、何が必要か。何をしなくてはいけないか。という事ことを皆さんにお伝えしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
1)-3 基本動作の確認(ウォーミングアップ)
■横移動をあまり取らな落下系で6ターンから8ターン、ピボット操作を強調して滑ります。
■上下動を使った伸身系のピボット操作をします。
■屈伸系のピボットは、お尻を下げてポジション崩してしまう可能性の高いクラスなので使用しません。
■ウォーミングアップも兼ねて、上下動を大きく使った伸身系のピボットの連続で、スキー操作、運動レベルを確認します。ピボット操作に必要なスキー操作の習熟度、スキーの扱い方、荷重の仕方、ポジションなどを確認します。
直滑降姿勢から下方向へ目標に向かって一直線にスタートをします。
コブ力の受け止めを想定してピボット操作してからしゃがみますがスキーや、雪面に力で荷重する気は全くありません。高くなった自分の身体の重さを、足の力を一気に抜いて低くなった状態です。足を踏ん張って雪面を押している状態ではありません。
しゃがんだ状態からピボット操作で方向転換をします。この時の高い姿勢ですが、身体を長くしていくイメージが良いと思います。身体を伸ばす準備で収縮したものが膨張するイメージですね。スキーの方向転換の周期と、ターンの周期を一致させて、後半の横スライドがあまり出ないように、スキーの向きを変えきるまで抜重している動きを見せるようにしましょう。
膨張するイメージもスキーの横向作業の周期に一致させ、スキーを踏ん張らないことの強調、スキーの回旋中はずっと抜重、スキーの性能よりも自分でスキーの向きを変え続けている意識の構築を目的とします。
着地の瞬間です。この瞬間は自分の足の力では無く、身体の重さの落下による荷重がスキーに自然にかかります。
横向けになるまでに着地してしまうと、スキーが走りコブで失敗する原因となりますので、スキーの向きを真横にするまでは、能動的な荷重が必要ないこと理解します。
身体が長い軸になろうとする方向は真上で構いません。足元から真上に身体を伸ばしくイメージで身体の下にある足元を意識します。スキーに置いていかれるような感覚は起こると思いますが、真上は真上でもスキーは動いていますから徐々に前後、左右、上下のバランス感覚が養われます。遅れない為には自分が先に積極的な移動(落下)の意識が必要という理解も出来ると思いますし、後のレッスンで。ブーツの前後動、フットコンテインメントの必要性にからめていって下さい。
生徒さんの滑りを見て、ひねりが弱い、内倒がある、荷重が弱い、など細かいところはあると思いますが、ピボット操作に必要なのスキー操作、スピードコントロール、上下動を中心に滑りながら、動けているかの評価中心でレッスンを進めていって下さい。
この滑走は1回だけでなく、3回程度はしていただいて結構です。落差を少なくして、スキーの回旋スピードをタイトにしてみたり、横スライドの長さを長くして目標までの横スライドも持続、スライドポジションの確認など、滑るリズムやタイミングを変化させて行いましょう。
3回ほど滑る間に前傾不足、身体のローテーション、運動量の不足、スキーの回旋量など、低速維持に必要なスピードコントロールのエッセンスをたっぷり伝えます。
2)展開 ピボット操作に必要なこと
2)-1身体の下に足元があり、足を動かす事ができるか
身体から足が離れている状態では、スキーの面の操作をやりにくいし、足も思うように動かせません。
■リードチェンジ
滑るスキーの上で前後に動かすことが出来る、また動いた結果バランスが不安定となる中でも、前後左右の滑走バランス保持を身につけます。また、山足を引きながらターンを始めることで、早い段階からの外足荷重を体感します。
・前後に動く回数は、片道3~5回行います。
・ゲレンデの横幅を使いますので、上からの滑走に気を付けてください。
・使用する幅や、片道、往復、連続でやるかは、生徒さんの人数やコース状況で安全に実施して下さい。
・先ずは斜滑降で谷足と山足の前後差の入れ替えのみに集中して行います。方向転換は何でも構いません。
・動きが整って来たら、方向転換は山足が引けた状態から始めるようにします。(回転防止、谷足荷重の強化、スキーを走らせない)
・スタンスはハの字でもパラレルでも、生徒さんの状況で判断してください。
・方向転換は必ず前後差が入れ変わった事を確認してからピボット要素で回旋をします。
■サウザンステップ
滑るスキーの上での足の踏み変え、踏み変えながらスキーの向きを小刻みに変化させること、滑走バランスが保持できるかを習得します。身体の下にある足でスキーの方向を換えるピボットの動きが習得できます。
・ステップする回数は斜行8回程度、ターン中で8回程度で行います。
・ゲレンデの横幅を使いますので、上からの滑走者に気を付けてください。
・使用する幅や、片道、往復、連続でやるかは、生徒さんの人数やコース状況で安全に実施して下さい。
・先ずは斜滑降(出る角度は:真横で良い)でステップのみに集中して行います。方向転換は何でも構いません。
・動きが整って来たら、方向転換中もステップをします。
・方向転換の始まりが、すごく不安定になること、足を素早く動かす必要がある、動きのメリハリを理解します。
・方向転換の直前は山回りすることで、動き出す瞬間に少し間が取れることを理解します。
・足を素早く動かすのも、漠然に早くではなく、動きのリズムを細切れに刻むと良いと思います。
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タタタタタタタタタンタンタンタン

整地でもコブでもやれるといいです。
■ツイスト
滑るスキーの上でスキー回旋ができるか、前後左右の滑走バランスの確認。スキーの性能に頼らない自力でスキーを動かす意識の強化。谷足荷重強化、内足操作、スキーの回旋を習得します。
・初めは上半身の動きが大きくて構いません。大きな運動、スキーが横を向くタイミングに合わせた全身運動に集中します。
・徐々に動かす意識を、股関節から下の意識で、最終的にはつま先でスキーの向きを変えるイメージになると良いです。
・腰や膝を中心に捻る意識は怪我の元になりますので注意してください。腰、膝は捻ることは出来ません。
・先ずは股関節から腿、膝、スネの向き全て同じ方向で、内足からの動き出しの重要性も伝えて下さい。
・ツイストは全身運動で難しいですが、スキーの自力回旋と身体の下に足元を感じる事を大切にしてください。
2)-2 ピボットに必要なスキー操作( スキーの面の使い方、内足操作)
■逆ハの字ピボット
内足からの始動と内足抜重、内足→外足の順序を明確にしてスキーの操作、切替しの小さなハの時を出さない、スキートップの操作、山足立ちバランス、スキーの面での操作を習得します。
■山足ピボット
片足で立ち続けることで腰の下にブーツがある状態での回旋を実感する。前後左右のバランスを身につける。
■ストックゲートドリル
このドリルはスキー操作に加えて身体全体の動きが身につきます。トップからの始動、ブーツを引く、スキーの回旋、切替しの重心移動をワンパッケージで習得します。
・ピボットの練習は滑走距離が短いのでインストラクターは生徒さんの前で、2・3ターンお手本を見せて下さい。
・他のドリルと同様に順々に滑走するパターンでも構いませんが、その場所で各自で行うパターンでも良いです。
・各自で行うパターンの場合は、生徒さん同士が接触しない間隔を保ち下方向へは十分な距離の確保をお願いします。
・インストラクターは生徒さんを全て視界入れる事、斜面上からの危険因子が及ばない場所の選択でお願いします。
・ピボット操作に夢中になり、自分の現在地を忘れコース中央に出てしまうケースもありますので注意しましょう。
2)-3 ピボットに必要な姿勢、ポジション( 整った停止姿勢、傾き、目線、前後差、スタンス幅)
ここまで、ピボットに必要なスキー操作や、身体の下に足元があり、足を動かす練習を沢山やって来ましたが、上手くいかないケースも沢山あったのではと思います。上手くいかないのはナゼか?それはピボットする前の姿勢です。その姿勢がある程度整っていれば、なんとなく出来ちゃったというのもありますが、ピボットするとき、ピボットを連続するときは、整った停止ポジション、思い通りに動き出せる足場がとても大切になります。
■正しい姿勢。傾き、目線、スタンス幅(なし)、前後差(なし)、 足首・股関節・頭が一直線
■正しい姿勢。谷側への傾き、目線、スタンス幅(なし)、スキーの前後差(なし)、谷腕・山腕・ストックの位置
■正しい姿勢。直滑降姿勢(基本姿勢)からスキーが真横を向いている状態、逆ひねりが効いた姿勢。
■スライドポジションとしてはGOOD!ですが、山足が谷足より前にあり、足のバラケ、身体の回転系になる可能性あり
■はじめてクラスではGOOD!ですが、傾きが弱い。目線、身体がスキーに正対。スタンス幅広い、前後差大きい、足のバラケ、回転系になる可能性。
■逆ひねりは効いている感じですが、谷肩が引けた状態で落下が出来なさそう。足元も身体の真下に無い姿勢です。ひねりがあるので一瞬ピボットで動き出す可能性もありますが、次の瞬間バラバラになるか、谷エッジがかかり過ぎて、もしくは谷エッジを踏みすぎで全く動かない可能性。
■このまま山足ピボットで荷重から回旋、逆ハの内足抜重を使えば、上手くいく可能性もありますが、このままでピボットするとお尻が下がっているので、お腹が空に抜けてスキーに置いていかれるかも。微妙な姿勢です。 
2)-4 ピボットに必要な整った停止姿勢に役立つドリル
真っ直ぐ滑っる、曲がる、止まる基本原則が、いかに大切かを理解出来たのかなと思います。簡単そうで、難しいです。また、思い通りに動けるかの足場になっているかも改めて感じてもらいましょう。
停止の足場強化に有効なドリルは
■直滑降からの横スライド停止、前後差消す
■ホッキーストップ
■断続エッジング
■ジャベリンターン
■外足から谷足のみっつの「か」
■ウエイトシフト
などがありますので、参考にしてください。
3)コブでの実践(落下系 出口狙い)
ここまで練習が出来ればコブ斜面に入ります。
3)-1 1コブ停止
■初級2クラスのレベル差がありますので、必ず1コブ停止から始めます。
■コブの中でのテーマの洗練度を確認、テーマに集中します。
■ピボットする前の姿勢、足場の理解をする為にコブ裏停止で始めても良いと思います。
3)-2 練習ドリルのコブでの実践
■整地で出来ていてもコブでは出来ない、上手くいかない事はよくあります。
■練習ドリルをコブでも実践し、練習ドリルの理解を深めます。
■コブでは動きが必ず小さくなります。整地で大げさにするくらいでちょうど良い事も実感します。
3)-3 コブで連続
■コブでの連続は4コブから6コブくらいでも十分です。
■1本目は1コブ停止を微妙に連続する程度の速度でテーマや、運動表現をわかり易く見せて下さい。
■2本目以降は、少し滑らかに速度を上げても構いませんが、テーマが見える事が重要です。
動画は「ストックを出すタイミングでコブでの重心移動を早める」になっていますが、仕上げの滑走スピードこれより早くならない程度でお願いします。このスピード以下の範囲内で、テーマに特化したデモンストレーションをお願いします。
3)-4 コブ滑走時の安全確保
■コブの場所、形などを説明するとき、ラインを外し、ラインの上の状況(滑走待ち)を必ず確認する。
■説明は、生徒さんと同じ方向、同じ目線の高さで出来るだけお願いします。
■コブラインの入口以外は、左右に生徒さんを立たせる状況はあまり無いと思います。
■ラインを挟み、向かい合わせで説明することは推奨しません。
■ラインの途中で区切る場合は、何コブ目で止まってラインから出ましょう。右コブから左へ出ましょう。などの指定お願いします。
■ラインから出る場合はインストクターその場所に立ち、滑走者は自分の背後、斜面下に並ばせて下さい。
■レッスンの間に入った一般の方がコースアウトする場合もあります。ラインからの距離、注意喚起をお願いします。
3)-5コブのビデオ撮影
■最後のコブ滑走時で無くてもいいので、必ず1本はビデオ撮影をお願いします。
■撮影はコブの状況にもよりますが、下から上向きなるべくフォールラインに合わせて撮影をお願いします。
■横映像が欲しい要望もあります。出来る状態でしたらお願いします。撮影後、下で待つ生徒さんに拍手をもらって下さい。
■動画に、レッスンのテーマや、当日の成果、今後の課題についてのコメントを入れて下さい。
まとめ
足場作りはコブ滑走に最も大切な基本です。 スキーをしている限りはずっと強化し続けたい大切な事です。 迷ったら戻る場所として、上達するためにずっと強化したい土台としての認識をインストラクターとお客様で常に共有しましょう。