このレッスンの目的
斜面下から見て横に向けているスキーの角度が45度以下のスライドを縦スライドと定義しています。46度以上は横スライド、45度以下は縦スライドとなります。この定義は当スクールの定義で世界共通ではありませんので注意して下さい。
なぜ45度を境にしているかというと、大体のコブは自分より斜め下の左右45度くらいにあります。
これが急斜面のコブだと、みんなスピードを抑えたいのでスキーを横向きにします。すると溝は横向きに近い角度になります。緩斜面だとスピードを抑える必要が無いので浅い角度で、溝が縦向きになります。
その間、オーソドックスなコブが大体45度だと仮定して、また、その角度を基準にして練習すれば、いろんなコブの角度にスキーを合わせて滑ることが出来るという考えに基づいています。
縦スライドを身につければ、滑れるコブの種類が格段に増えます。春の溝の深いコブだって滑る事ができます。それに必要なのが縦スライドということになります。
対象とレベル
このレッスンはコブの基本(2)で初級2領域に位置づけられていますが、とても難しいので中級1寄りだと考えてください。横スライドとピボット操作が確実にできている必要があります。そして、これから先のCスライド、ボトムスライド、ウォールスライド、Dスライドすべてのスライド滑りに必須要素となります。
初級2 中級1
滑走スピードから見た滑りの方向性
Elegant 低速〜中速での等速
縦スライドは止まりませんので、連続して滑る前提で始まります。低速〜中速を維持した等速を目標としましょう。
進め方
進め方の見方
1) 大要素 / このテーマの流れの中の大きな要素
1)-1 小要素 / 大要素を達成するための要素
大要素の大きな流れに沿って、小要素を行っていきます。小要素は流れのあるものは通して行う必要がありますが、飛ばしたり、その日の状況によって一部を抜き出して利用しても構いません。また、2日連続で同じテーマに同じお客様が参加された場合などは小要素を変えて対応することが可能になります。
このテーマの大きな流れ
1) 縦スライドを知る
2) ウエイトシフト
3) スライドポジション
4) スキーの回旋と回旋スピードと量の調整力
5) 縦スライドの大まかな使い方2つ
6) コブでの実践(落下系)
1) 縦スライドを知る
低速縦スライドの見え方です。スキーを横にするタイミングを遅らせると縦スライドの時間が増えてきます。
1)-1 ハの字での直滑降
簡単にいうと、ハの字で直滑降している時が、両スキーが縦スライドしている状態です。最初に作ったハの字のまま、スキーの角度を変えないでスピードを抑えようとすると、必要なポジションも感じられます。
2) ウエイトシフト
ハの字の直滑降でスタンスを閉じればどうなりますか?直滑降ですね。コブで行うと危ないです。では、斜面に置いたスキーの角度に関係なく、スキーをスライドさせるにどうすれば良いでしょう?スキーの板に対して横方向に力を働かせるとスキーはスライドします。その視点からはじめるとすると、重心移動、体重移動を重視したウエイトシフトからはじめるのが一つの方法です。
2)-1 ウエイトシフトの基本的な動き
その場で下向きのハの字を作って、左右に体重移動をします。 両脚の内旋と、両ストックで身体の落下を止めて行います。右50:左50

右足にウエイトシフトして、右谷足のスライドポジションをつくります。

あえて外足と言わず谷足と言っているのは、右に移動した方向に斜面下がある横スライドとリンクさせる目的です。(横スライドとイメージをリンクさせる事でスライドさせやすくなる。)
横スライドとの違いはテールの位置がトップより、より高い場所に位置していることです。この姿勢はスライドポジションでもありますが、運動を切り替えす事が出来る安定した足場がある停止姿勢と考えることもできます。
左にウエイトシフトして、左谷足のスライドポジションをつくります。

同じように左の谷足スライドポジションです。切り替えせる足場、反対に動き出せる足場のある、運動の停止姿勢です。
動きが整って来たら、ストックの支えを取りウエシトシフトを行います。前に加速して進んでいく方もいますので、下方向の距離は十分に確保して下さい。なぜ、前に加速して後傾になるかは、スキーに置いていかれているからです。
・おヘソや足元が前に抜け出さない
・胸が空を向かない
・深い前傾姿勢が必要
この必要なポジションをここで理解、体感します。
左右に動いているだけに見えても身体は複雑な動きをしています。テールが動く軌道に合わせて身体の重さの移動イメージや、平行移動のラテラルムーブメントで安定します。
フットコンテインメントの要素も含まれています。(緩斜面だと、ウエイトシフトしながらバックすることも可能で、とても良いポジショントレーニングになります。)
ウエイトシフトは体力も必要です。簡単そうで出来ない。難しさ、悔しさを楽しみながらレッスンを展開しましょう。
当然ながら、外(谷)足荷重、前後左右のバランス感覚の強化、後傾防止にもつながります。(縦スライドにはそれらの要素が整う必要があるということです。)

1.スキーを横に動かすウエイトシフト
2.トップが下テールが上の状態をキープできる前傾姿勢が重要
ということをしっかり抑えます。
2)-2 斜滑降から横スライド1
中斜面においては、斜滑降からの横スライドが有効です。
▼進行方向へ前傾してスタート、トップは山側、テールは谷側へ動かし、進行方向を維持してスライドを続けます。

目標の進行方向への前傾と、スキー横方向から斜め前への移動意識、移動し続けることの重要性を実感します。
進行方向への前傾とスキーの向きを変えた足のひねりが、前傾+ひねりで作られた前傾外向姿勢となります。
斜滑降から横スライドですが、スキーを横まで向けすぎない斜め前スライドが縦スライドに繋がります。
進行方向の前向きの傾斜と、斜面のフォールラインのとが複合した斜面を移動していくことになるため、コブ裏の傾斜に見立てた練習になります。(コブ裏は前と横の傾斜が複合した斜面を滑るとも言えます。)
ここが理解できると、割と上達は早いと感じます。
2)-3 斜滑降から横スライド2
斜滑降から横スライドしてスキーの角度45度の向きにして停止しようとします。
進行方向に前傾してスタート、今度はトップを谷、テールを山に動かし横スライドをして、斜め傾斜で停止しようとします。

大半は傾斜に負けてしまってスキーが横になって停止してしまいます。 スキーの向きを変えた後もフォールラインに対して斜めにスライド跡が付けばOKです。そのスライド跡はスキーの幅と同じ幅のスライド跡が平行に残ります。カーブしていないことが大事。
斜め傾斜にとどまる力が無くなれば、スキーはその場所の傾斜に従って動き出します。
スキーに前傾ではなく、斜面下方向への前傾とスキーを横に動かす強いウエシトシフトが必要な事を理解します。落下の力を薄めるのは、強力な横移動の力です。
縦スライドに必要なの3つ目は
3.前傾+ひねりで作られた前傾外向姿勢と移動をし続けること
3) スライドポジション
縦スライドに必要なのは、ウエイトシフト、前傾、前傾外向姿勢の理解が出来ました。ここでは、それらを総合的に行う為の練習を紹介します。
3)-1 イナズマプルーク

図からも解るように、スライド方向はスキー対して90度の横スライドと変わりません。テールが落ちてくると横スライドになってしまうので、スキートップもスライド方向に進める意識があると良いです。落下は勝手に発生しますので、スキーの角度のキープと、横方向へのウエイトシフトが大切です。
3)-2 半制動で適切なスライドポジションを身につける
縦スライドは直滑降姿勢がより的確でなければいけませんので、半制動を使ったスライドポジションで確認をしていきます。
・直滑降姿勢からの足のひねりでスライドポジションを身につける。
・ひねりの作り方はスキートップを中に入れる。
・そのスライドポジションで斜め下へ真っ直ぐにスライドをする。
・テールの位置を落とさない。落とすと横スライド方向に動いてしまいます。
・スライドが起こりやすいスキーの前後差、股関節の前後差、構えの前後差の3点セットをつくります。
・外足の曲げと引き続ける動き。
3)-3 ジャベリンターン
ジャベリンターンでのスキーの交差方法は半制動ドリルと同じです。外足は内足のスキートップの下に潜りこませるようにします。内スキートップの向きを斜面下に対して45度で止めれば、ジャベリンターンも縦スライドの練習として有効です。
3)-4 指差し確認
指差し確認も、斜め45度下の目的に指を指し続けることで縦スライドのドリルとしては有効です。
4) スキーの回旋と回旋スピードと量の調整力
ここまで、縦スライドのイメージやウエイトシフト、前傾、前傾外向姿勢、スライドポジションなどを行ってきましたが、スライドとスライドを繫ぐ切替しも必要です。
縦スライドは回転系の動作が入るとできませんので、足のひねりと、ひねり解放の動きが重要です。また、スキーの回旋も意識的にコントロールする必要があります。
4)-1 前傾ツイスト
前傾、直滑降ポジションをキープしながら、足元を自在に動かす事を身につけます。始めはスキーの向きを可能な限り回旋します。自分が素早く大きく回旋できる範囲を確認します。
動きが確認出来たら、意識的に自分の回旋マキシマムの手間でルーズに止めてみましょう。
意図的に回旋量をコントロール出来たら、前傾ツイストにウエイトシフトを加えて、ジグザグの前傾ツイストを行ってみても良いでしょう。
4)-2 コブ裏停止
縦スライドに必要な操作や動作が理解が出来ても、今から向かうコブの角度がおよそどれくらなのか知る必要があります。
向きを変えすぎると、テールが落ちてしまい溝に落ちてしまう(テールが壁にふれる)ことになります。
向きを変えなさすぎると、トップ方向にスキーが移動しスライドが発生しにくくなります。
縦スライドの初歩はコブ裏停止が基本です。裏で停止できる角度が60度くらいであっても、それが基準となります。(縦スライドの基準値がコブ裏の傾斜角によって変化)
コブ裏の角度を、溝の向き、壁の向きから読み取り(ほぼ同じと考えて良い)その角度より1度でも回旋量を少なくコントロールできれば、縦の世界の第一歩となります。
5) 縦スライドの大まかな使い方2つ

▲青色のスキーの軌跡が、最終目標としたい縦スライドです。
スキーの角度を45度までに留めながら斜め下へ真っ直ぐに直線でスライドしています。青色の点は45度の角度で打っていますので、コブの肩に到達したところで溝の向きとスキーが45度に合っています。落下しながら45度を作っていくため、軌跡を追いかけると結構縦に滑っているように見えます。
真っ直ぐに落とそうとする向きのベクトルと、斜め45度に動こうとするベクトルが等しいと仮定すれば、その半分の22.5度に方向にスライドすることになりますので、もう少し角度をつけたければ、より強いウエイトシフトが必要ということも言えるのではないでしょうか。
赤色のスキーは回転系の縦スライドです。この軌道だと春のコブは滑る場所が難しくなりますので、落下系の縦スライドの習得が必要となります。

▲上の図は、ワンターン目をズルドンにしたものです。青色のスキーの軌跡だと、最終形の縦スライドの流れにあるのが良く解ります。
赤色のスキーの軌跡がバンクターンだという意識が強ければ、春コブの種類によっては手強いものとなりますが、端っこでズルドンを入れることで、青色のスキーに移行ことができます。
赤色と青色は横移動があるか無いかだけなので、横移動を少なくすれば、青色に近くなります。
ですから、回転系のレッスン内容になった場合でも、ひねりを入れるなど、青のスキーにつながる内容でレッスンを組み立てた方が後々、汎用性が高いです。
6) コブでの実践(落下系 )
6)-1 1コブ停止
コブ裏停止は、縦スライドの基本ですので、正確なスライドポジョン、ウエイトシフト、前傾外向の確認をします。
6)-2 ブーツから当てる1合目
表現は違いますがコブ裏をベースに横に向けすぎないスライドです。スライドの角度よりも適正なスライド姿勢と斜面下方向への落下の重心移動の習得が先です。落下の重心移動が強くなれば、スキーは横を向く暇がありません。コブの乗り越えるときの前傾が保たれた姿勢も縦スライドにはとても大切になります。
6)-3 コブで連続
コブでの連続は4コブから6コブくらいからでも良いです。1本目は1コブ停止を微妙に連続する程度の速度でテーマや、運動表現をわかりやすく見せましょう。2本目以降は、少し滑らかに速度を上げても構いませんが、テーマが見える事が重要です。
▲上の動画は、ズルドンを進化させ縦スライド使った滑りで、ボトムスライド、ウォールスライドに発展しています。進化と言ってもベースはズルドンです。
初級2ではでここまでの滑りはしませんが、縦スライドを身につけることで、滑れるコブの種類が格段に増えます。
難しいですが、これを取得しないといずれ頭打ちがくる。しかも八方塞がりの。なので余計に習得してもらいたいスライド方法です。
難しい事を楽しめる雰囲気作りを心がけましょう。
まとめ
縦スライドは難しく、習得までに時間がかかります。縦スライド習得までに必要な時間をいかに飽きさせずに、諦めさせずに何度も縦スライドレッスンに入って頂けるかが教える側として大切になります。
ここに記載されている項目全てを1日に詰め込むことはできません。その日ごとにメインとする小要素を決めてレッスンすることで、何パターンもの縦スライドレッスンを作ることができます。
お客様にとっても大きなステップ、インストラクターとしても縦スライドを教える事ができる、手本を見せる事は重要なステップになります。
お客様と共にステップアップしましょう。
このレッスンテーマの参考動画
以下のレッスン動画も参考になさってください。
▼ズルドンポン
<script